『ビビを見た!』とかいうトラウマ絵本【ネタバレ注意】

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わけがわからないタイトルですよね。『ビビを見た!』って。そんな奇妙奇天烈なタイトルですが、実はこの絵本、大人でも考えさせられる絵本の代表格です。

児童向けの絵本なのですが、とにかく強烈な作品です。鉄のカタマリで顔面を殴らるような衝撃的なストーリー。読み終えた後の気まずさと読み終えた後の圧倒的な爽快感を見事に両立させた化物みたいな絵本として有名な絵本なのです。

とくに爽快感と清涼感があふれるラストシーンはあまりにも有名で、ぜひそこは読んでいただきたいです。きっと心がじんわりと温かくなっていくのがわかると思います。

Amazonのカスタマレビューは驚異の星4.9。これを読んでおかないとサブカルは語れません。まさに知る人ぞ知る、えげつない絵本なのです。

今回は名作絵本『ビビを見た!』をご紹介したいと思います。この記事の中にラストシーンのネタバレはありませんので安心して読んでください。

ビビを見た!

盲目の主人公ホタルに「7時間だけ見えるようにしてやろう」と言う声が聞こえた。ホタルの目が見えるようになると同時に、回りの人は光を失った。しかもホタルの住む町が正体不明の敵に襲われるとテレビ放送が始まった。人たちは町を脱出するための列車に乗り込んだ。ホタルは列車の中で不思議な緑色の少女ビビと知り合う。その列車を巨人が追ってくる。巨人をなだめられるのはビビだけだ…。

目が見えない少年ホタルが、7時間だけ目が見えるようになるというハートフルなストーリーにも思えますが、内容はめちゃくちゃシビアです。

イラストは版画調の主張の激しいものになっており、本能に強烈に訴えかけてきます。グロテスクな表現はありませんが、あまりにも無機質で神秘的なイラストなので、まるで心理実験を受けているかのようです。

イラストがえげつないので、気が狂いそうになりますよ(笑)

どうあがいても絶望のストーリー

ホタルの目が見えるようになると同時に、世界中の人々の目が見えなくなってしまうというホラーチックな導入、そして、突如としてテレビから鳴り響く緊急放送。

目が見えなくなった人々たちが暮らしている町を正体不明の巨大な敵が襲いに来るという理不尽で唐突な展開。巨大な敵が人々をゴミのように蹂躙していく様子が淡々と文章で語られるのですが、これが怖い。

みんな目が見えなくなっているので、お互いに疑心暗鬼になっており、パニックを起こしてしまうのです。我先に逃げ出そうとする人間の心理を克明に描き出しています。

子ども向けの絵本とは思えないですよ・・・。もはやゴジラだよゴジラ。いや、フランク・ダラボンのミストだよ。もはや。

前半の展開は、完全にモンスターホラーパニックです。

理不尽な展開

せっかく目が見えるようになったホタル。美しいものをいっぱい見ようと思っていたのに、巨大な敵に追いかけられる羽目になってしまいます。しかも、そいつは町をぶっ壊すほどの化物です。

子供向けの絵本ではありますが、非常に理不尽な展開になっており、そこに一切容赦はありません。なぜホタルは目が見えるようになったのか、なぜ世界中の人々は目が見えなくなったのか。そういった説明は全くありません。

この物語には合理性やロジックが介在する余地はないのです。ただひたすらに本能に訴えかけてくる、そういうストーリーです。

読み終わった後に、その不気味で神秘的な表現を思い返してゾッと冷や汗をかくほどです。

ビビという緑色の少女

電車に乗って逃げ出したホタルは、電車の中でビビという少女と出会います。昆虫のような姿をしているその美しい少女との出会いが、ホタルの運命を大きく動かすことになっていきます。


無邪気な子どものように振る舞うビビ。周りへの迷惑も考えず行動するビビに手を焼くホタル。そしてビビを付け狙う巨大な敵ワカオ。

ビビとホタル、そして巨人ワカオ。この3人を中心にして、物語はラストシーンへと向かっていくことになります。

伝説のラストシーン

きっかり7時間経過してしまうと再び盲目になってしまうホタル。でも、再び目が見えなくなってしまう直前、最後の最後の瞬間に、あまりにも美しいものを見つけました。

はかなく美しいラストシーンは、やがて伝説となって、今なお絵本業界で語り草になっています。ラストシーンは、まるで一瞬の夢を見ているかのようです。

ラストシーンはぜひご自分の目で確かめていただきたい。絵本とは思えない展開になっていますから。体中がガクガクと震えたつような感動がわたしたちを包み込みます。

ビビを見た!のラストシーン
トラウマ描写も心に残りますが、この伝説のラストシーンが多くの人々の心をガッチリと掴んでいるのです。

あまりにも残酷だけど、あまりにも詩的で甘酸っぱい。

人がいっぱい傷ついて死んでいくような凄惨な物語だけれど、信じられないくらい美しい。そんな不思議な作品です。ラストシーンを読むと、不思議と涙ぐんでしまう自分がいます。

よしもとばななも絶賛

この作品、作家のよしもとばななさんが大絶賛しています。この絵本から相当影響を受けているようです。幼い頃に読んで以来ずっと大切に持っているそうですから、大好きなのでしょう。本編の後で本人が解説を書いているのですが、異常に絶賛してます。

売れっ子作家がそんなに愛している絵本。すごいと思いませんか。

もともと1974年に発行された古い絵本なのですが、読者の熱い要望により2004年に復刊されたという経緯があります。大人になっても忘れられない人が多かったんでしょうね。

まとめ

今回は『ビビを見た!』のご紹介でした。

限りある時間をどのように使うのか、本当に美しいものとはなんなのか。

決して説教臭くならずに、そういったテーマをわたしたちに教えてくれる作品、それが『ビビを見た!』なのです。

ビビという少女
お子様には刺激的かもしれませんが、ぜひ一緒に読んであげてください。

そしてオトナになってしまったわたしたちにとっても大いに読む価値のある作品です。

あくまで絵本ではありますが、非常に文章が多いです。普通の短編小説くらいは時間を取られるでしょう。じっくりと腰を据えて向き合ってみるのが良いと思います。

最近感動してないな、心を震わせていないな、そういう方は多いと思います。わたしもそうです。そういうときは『ビビを見た!』を読みましょう。

きっとガツーンと殴られたような衝撃が、そして激しい電流が脳内を走り回ることになると思います。

ちなみに作者の大海 赫(おおうみ あかし)さんは85歳。早稲田大学の文学部でフランス文学を学ばれました。『ビビを見た!』以外にも、トラウマ作品をたくさん世に送り出したことで知られています。どうやったらこんなに心動かす物語が書けるのでしょうね。