【画像あり】ラピュタのオープニングの意味とは?なぜラピュタは滅んだのか

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天空の城ラピュタのオープニング映像って印象的ですよね。シータが飛行船から落下した直後にオープニング映像が流れます。

あのオープニング大好きなんですよ。はるか昔に栄華を極めたラピュタですが、最後には結局滅んでしまうという歴史が描かれます。神話風のタッチで描かれるオープニング映像は、ちょっと考察したくなりますよね。

今回は、ジブリの大博覧会で展示されていたラピュタ帝国の歴史をご紹介します。オープニングの画像と解説です。

ラピュタの歴史

ラピュタのオープニング

写真が小さいので、下に文章を抜粋しました。写真はすべて2016年に開催されたジブリの大博覧会で撮影したものです。


映画「天空の城ラピュタ」のオープニングシーンでは、空中帝国の誕生と終末が描かれています。風の力によって火と鉄を手に入れた人間は、地表から地下へと支配を広げ、その機械文明はやがて天空まで向かいます。空中帝国の誕生です。しかし、その空中帝国は突然すべてが崩壊して終末を迎えるのです。「ラピュタ」の本編は、この文明の衰退の歴史のずっと後の時代に始まる設定になっています。

人間はいつから風の力を利用するようになったのだろう。風車で炉に空気を送り込み、岩を溶かし鉄を作った。もっと大きくもっと強く。大地を穿つための巨大な歯車。

地中の富をもとめて、下へ下へと爪はえぐる。たちのぼる黒煙、巨大な溶鉱炉に群がる人間達。

ついに人間は空をとぶ。火の力で風車をまわして。汚れた大地から巨大な船が空へ向かう。空を埋めつくす飛行機械達。

やがて建造物までも空に向かう。大地をはぎとり町も王宮も庭園も浮かび上がる。

壮大な空中庭園を建設した。力が頂点に達した時、おわりが始まる。

やがて空には暗雲が立ち込め、大気に怒りが満ち溢れる。

栄枯盛衰

上記のとおり、オープニングの映像では、ラピュタの栄枯盛衰が描かれています。

まずラピュタ人は風のちからを活用して、大きな風車を作りだしました。そして風力を用いて、大地を掘り進み、地中の資源を取り出します。

その後、地中の資源を使って、火力を生み出し大空へと飛び出していきます。

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大小、さまざまなたくさんの船が大空を舞います。

ラピュタのオープニングに登場する船

とりわけ大きな船。たくさんのプロペラが印象的ですよね。かつてのラピュタ人は、こんな巨大な船で空を目指したのでしょう。

その後ラピュタ人たちは、巨大な城や大地(本編に登場する天空の城)までも空に浮かべてしまいます。そうしてラピュタ帝国の繁栄が頂点に達した時、ついにおわりがやってきます。ラピュタ帝国の繁栄も長くは続かなかったのです。

オープニングの映像をじっくり観ていただくとわかりますが、巨大な飛行船(巨大な建造物?)からたくさんの人間がぞろぞろと降りてくる様子が描かれているカットがあります。

つまり、なんらかの理由によりラピュタ帝国は滅んでしまい、そこで暮らすラピュタ人たちは地上に降りることになってしまうのです。そして、地上に降りてきた王族の末裔がシータやムスカ、ということになります。

その後、主人を失った天空の城は人知れず、はるか上空をさまよい続けることになりました。

そしてパズーの父親が、空に浮かんだラピュタを撮影し写真に残します。こうして、ようやく本編のパズーたちの時代につながっていきます。

なぜラピュタは滅んだのか

ラピュタの小説版では、原因不明の疫病が流行したため、地上に降りざるをえなくなったということが、ムスカの口から語られています。 

「そう、君の一族と私の一族は、もともと一つの王家だったのだ。<吾れ病みてより久し、いずこかに得ん死生の地>―古文書の最終章さ。この城に得体の知れない疫病が流行り、ラピュタの科学をもってしても克服できなかった。それで地上に舞い戻り、ゴンドアの谷でひっそりと暮らしはじめたというわけだ」

小説 天空の城ラピュタ<後編>より引用

しかしながら、正直なところ宮崎監督はラピュタがなぜ滅んだのかについて、そんなに詳細な設定を練っていたわけではないと思います。

「今、ラピュタがなぜ滅びたのか、私よくわかる。ゴンドアの谷の詩にあるもの。 土に根を下ろし 風と共に生きよう 種と共に冬を越え 鳥と共に春を歌おう どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんのかわいそうなロボットを操っても、 土から離れては生きられないのよ」

物語の終盤でシータがムスカに言い放ったとおり、人間は土から離れては生きていくことはできないのです。結局、それが理由なのです。

空に城を構え、多数の属国を従え、地上の国々を支配したラピュタ帝国。そのすさまじい科学力は、まさに人類の夢と呼べるかもしれません。

でも、人間の傲慢な態度はいつまでも長続きはしないのです。飢饉か、疫病か、はたまた内乱でも起きたのか。理由はいくらでも考えつくのですが、やっぱり人間は土から離れては生きていけないのです。

原因不明の疫病。
それは傲慢にも天空に城を構えたラピュタ人への当然の天罰だったのかもしれません。

「ラピュタ」と「バベルの塔」の共通点

天罰といえば、旧約聖書の「創世記」の11章のエピソードを思い出しますね。

まだ世界中の人間が同じ言葉を話していた頃のお話です。シンアルという地の平原にやってきた人間たちは、天にも届くかという高い高い塔を作ろうとしました。いわゆるバベルの塔の神話です。

神はそんな傲慢な人間たちに天罰を与えました。天まで届く高い塔が完成してしまうと、人間たちは自分を畏れなくなってしまうだろう、そう考えた神は人々の話す言葉をバラバラにしてしまったのです。

言語も住む場所もバラバラにされてしまった人間たちは、二度と力をあわせて塔をつくることができなくなりました。この有名なバベルの塔の神話は、地球上の人々がそれぞれ違う言葉を話すことになった起源の説明ということになっています。

ラピュタとバベルの塔

ブリューゲルの描いたバベルの塔。ラピュタとよく似ていますよね?

バルスという滅びの言葉(たった一言の呪文)によって、一瞬のうちに崩れ去ってしまったラピュタ。そして言葉の乱れによって廃墟になってしまったバベルの塔。

言葉によって崩壊した「ラピュタ」と「バベルの塔」。はたして両者に共通することとは何でしょうか? ぜひ考えてみてください。

ちなみに作中に登場する巨大戦艦ゴリアテも旧約聖書のエピソードと関係があります。旧約聖書のサムエル記で語られる、ペリシテ人の3mの大男ゴリアテがその名前の由来です。

モヘンジョ・ダロとラピュタ

宮崎監督は、「ラピュタがなぜ浮かんでいるのか、ラピュタの構造はどうなっているのか、飛行石の原理はなんなのか」といったことについては、とくに詳細や理由を考えていないと明言しています。

ただし、一応、宮崎監督が空中に浮かぶ島のお話を作ろうと思ったきっかけのひとつとして、モヘンジョ・ダロというインドの遺跡について下記のとおり語っています。

以前、インドとの合作で『ラーマーヤナ』をやらないかっていう話が来たんです。その時プロデューサーが「地球は一回核戦争にあっている」という話を書いた本を置いていった。(中略)そしたら、古代に空を飛んだり、核兵器を操ったりしたというようなことが、インドでは信じられている、というふうに書いてある。モヘンジョ・ダロが滅びたのは、そのせいだとか書いてあるわけですよ。機械文明が昔あったというモチーフなどは、その内容がたぶん頭にひっかかっていたんだと思います。

『文春文庫ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ』より引用

※モヘンジョ・ダロのエピソードは、あくまでラピュタを制作するきっかけのひとつだと思われますので注意してください。

インドの神話『ラーマーヤナ』では、かつて機械文明が栄えていたという世界が描かれています。空を飛び、核兵器さえ使用したというその文明は、あまりにも高度に発達した科学技術のせいで破滅を迎えてしまいました。

いわゆる古代核戦争説ですね。

ラピュタ帝国も『ラーマーヤナ』で描かれる世界のように、核の脅威に巻き込まれたのかもしれません。

これは未来少年コナンや風の谷のナウシカにも通底するテーマですよね。高度に発展した科学文明は破滅をもたらすことがある。宮﨑監督は天空に浮かぶラピュタという島の歴史にそんなメッセージを込めたのかもしれませんね。

ラピュタは冒険活劇のお手本のような名作ですが、作品の背景には深い設定が隠されているのです。次にラピュタを観るときは、ぜひオープニングの映像、「ラピュタの栄枯盛衰のシーン」にも注目してみてください。新しい発見があるかもしれませんよ。