図書室の思い出をみんな持っている【図書館情報学と恩田陸のすすめ】

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最近、ネット上で小学校の図書館が話題になった。

togetter.com

anond.hatelabo.jp

これらの記事が大きな反響を呼んでいる。詳しくは直接リンク先へ飛んで読んでみてほしい。しかし忘れずに、このページに戻ってきてほしい。


こうした記事を通して「図書館の在り方」について多くの人が激論を交わしている。

やっぱり図書館は誰にとっても身近な存在だから、みんなコメントしやすいし、コメントしたくなるのだと思う。

図書館って、どこの学校にもあるし、どこの街にも必ずひとつは設置されているから、みんなそれぞれの思い出があるのだろう。宝石のようにきらめく、図書館の思い出が。


こういう記事に寄せられているコメントや反応を読むと、やっぱり、みんな図書館が好きなんだな・好きだったんだな、と思った。

今日は図書館のことを話したいと思う。独り言レベルなので、気楽に書きちらしていることをご了承願いたい。

図書館の思い出

ぼく自身、小学校と中学校では図書委員をしていたので、学校の図書館は割と好きだった。小学校も中学校も田舎の小さな学校だったので、図書館というより「図書室」というレベルだったけど。もちろんぼくの通った小学校や中学校に司書なんていなかった。

ぼくは図書室が好きだった。よくわからないけど図書室という空間が好きだった。なんか、ほら格好いいじゃん? 図書室にたたずむ孤高の男、みたいな。そういうのに憧れたのかもしれない。

だから図書室に入り浸っていた。それが日常だった。その後、ぼくが根暗になったのは言うまでもない。

給食を食べ終えたら図書室にダッシュ。昼休みは図書室でよく過ごしたなあ。実に懐かしい。もう戻らない青春の日々だね。

そんな中学1年生の頃のことである。ひとつ上の学年のUさんとYさんというラブラブカップルがよく図書室に遊びに来ていて、イチャイチャしていて愛を確かめあっていた。

図書室の愛

12歳だったぼくは図書室という静寂で神聖な空間で、人生ではじめて、若い男女の交遊をこの眼に収めた。彼らを横目で眺めていたのは今でも懐かしい思い出である。その後、ぼくが根暗になったのはやはり言うまでもない。

まあ、そんなことはどうでもいい。

大学時代

大学に入学すると同時に、図書館に対する印象が大きく変わった。というのも、ぼくの通っていた大学は、日本でも有数の巨大な大学図書館を擁していたのだ。

小中高の図書室を漁船だとすると、大学の図書館はさしずめタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦である。もはや規模が違いすぎて、まったく勝負にならなかった。それくらい巨大で立派で、司書もスタッフも腐るほど配置されていた。

大学図書館



大学の蔵書量=大学の研究力ですから、きみたちは恵まれていますよ。たくさん図書館を使いなさい。図書館は唯一だれにでも開かれている研究の場所ですから、大切にしなさい」と、1年生の最初のほうの授業で教授が熱弁していたことをよく憶えている。

田舎から出てきたぼくは、目から鱗が落ちた。そうか、図書館ってそういう場所だったんだ。

図書館は膨大な知の集積地であり知的生産の場所だということを、そのときはじめて知った。

人類に残された最後の良心、図書館。来る者は拒まない懐の深い、文化学術機関。それが図書館なのだ。




間違ってもイチャコラする場所じゃないぞ。気をつけろ。

図書館の役割

図書館は馴染み深い場所であるが、その意義や役割はあまり知られていない。

図書館法によれば、図書館は「図書,記録その他必要な資料を収集し,整理し,保存して,一般公衆の利用に供し,その教養,調査研究,レクリエーション等に資することを目的とする施設」ということになっている。

つまりどういうことかというと、図書館は誰もが自由に使っていい民衆のための大学であるということだ。事実、公立図書館は利用料を徴収してはいけないことになっている。

日本は一応、教育の機会が均等に与えられている。でも、経済的な理由や家庭の事情などによって、事実上、世の中にはれっきとした教育格差が存在している。

そこで、だれもが平等に無料で、教養と学識を得られる場所として図書館という場所が必要になってくるのだ。まさに人間の生涯学習の最後の砦である。

図書館はすごいんだ。

これからは図書館のなかでイチャコラしてる場合じゃないぞ、図書館を見かけたら拝み倒せ! それくらいの勢いが必要だと思う。

図書館はいいぞ

正直いうと、ぼく自身、大学を卒業してからは、すっかり図書館から足が遠のいた。

しかも最近では書籍の電子化が進んでいるので、図書館の存在そのものも危ぶまれつつある。インターネットで調べ物するから、図書館なんていらない。そんな説もあるようだ。

図書館の未来




でも、図書館にも強みはある。
インターネットで調べ物をしても、ヒットしない事柄は意外と多い。万能に思えるインターネットでも、検索できる情報には限りがあって、専門的な情報になるとほとんどヒットしないこともある。

そんなとき、図書館は役に立つ。専門書がきちんと体系立って棚に並んでいる。しかも一覧性が高い。インターネットだけでは出会えなかった知識・光景が、確かに図書館にはある。わたしが12歳の頃に出会った景色のように。

図書館は上手く使えば、自身のキャリアアップにも繋がる。普通の書店と違って、静かで高尚な空気感が漂っているのも図書館の強みだと思う。周りの目があるので、集中して本を読んだり、一気に調べ物をしたり、そういうスマートな自分を演出しやすい。

これから先の時代では、いつでもどこにいても瞬時に指先ひとつで世界中の情報にアクセスできるようになる。しかし、そうした時代だからこそ、固定化された空間を内包する施設の価値は逆に高まっていくかもしれない。

みんなが好きだった図書館。これから先、どのような進化を遂げていくのか、非常に楽しみである。

図書館情報学を学びましょう

図書館情報学という学問分野がある。

図書館が持つ膨大な情報(書籍、電子資料など)をどのように取り扱うか、そういったことを研究する学問だ。これから先の図書館の在り方を考える、今注目を集めているホットな学問である。

滞在型の施設としての機能、コミュティとしての機能、図書館経営の有り様など、図書館という場所に興味のある方はぜひ、図書館情報学に触れてみよう。

慶應義塾大学には、社会人が働きながら図書館情報学を学べる大学院もある。図書館という身近な施設の裏側には、実に奥深い世界が広がっているのだ。

慶應義塾大学文学部・慶應義塾大学大学院文学研究科 図書館・情報学専攻

プログラム概要
 この分野は各種の図書館や情報機関で実務に就かれている方々が,在職したまま2年間の修士課程に就学し,修士号を取得できるように,卒業に当たって必要とする全ての授業科目が月曜と木曜の夜間および土曜日の午後に開講される社会人大学院として設置されています。
 図書館経営,図書館サービスをはじめとする図書館情報学の最新のトピックに関する科目が用意されています。教員,院生,実務家講師とのディスカッションや事例分析,グループワーク等を通して,課題の発見と解決のための批判的思考能力,成果発表のための表現力,高度な分析を可能とするICTスキルを身につけることが可能です。

社会人大学院 概要 - 慶應義塾大学文学部・慶應義塾大学大学院文学研究科 図書館・情報学専攻より引用

図書館情報学は非常に面白いので、まずは関連書籍を読んでみよう。購入してもいいが、せっかくなので近所の図書館で借りてきたりしても良いと思う。

このあたりの本はだれにでも読みやすいので、ぜひ読んでほしい。図書館の歴史なども知ることができる。


ほこりのにおい

青春時代を過ごした、ほこりっぽいにおいが漂う図書室の思い出。それは永遠の思い出である。毎日繰り返したあの日常が今や遠い昔である。だれもが経験した、学校の図書館という原風景をもう一度。

当たり前のようにやっていたことが、ある日を境に当たり前でなくなる。こんなふうにして、二度としない行為や、二度と足を踏み入れない場所が、いつのまにか自分の後ろに積み重なっていくのだ。
恩田陸『夜のピクニック』より引用

恩田陸。好きなんですよね。つまり何が言いたいかというと、恩田陸を読んでほしい。

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