日本人であるわたしたちは、とにかく海外の宗教事情にうといものです。確かに日本国内にいる限り、宗教について特に知識がなくても、それほど苦労することはありません。
でも、世界の宗教を教養として勉強しておくと、とても役に立ちます。
これから先の時代はどんどんグローバル化が進むため、一般人であるわたしたちも海外との接点が増えてくるでしょう。ビジネスで外国人と付き合うことだって珍しくありません。
外国人観光客は街中に溢れていますし、ファーストフード店なんかに行くと大勢の外国人がアルバイトをしていますよね。
グローバル化は、世界を股にかけるエリートビジネスマンだけではなく、わたしたち普通の庶民の間にもかなり近づいているのです。
そういったとき、共通言語として世界の宗教を学んでおくことが重要なのです。
では、どうやって宗教について学べばいいのでしょうか。興味もないことを学ぶのは苦痛ですよね。でも、わたしたちはアニメや漫画が大好き。そこから宗教に興味を持てばいいのです。
わたしたちが愛してやまないアニメや漫画といった創作物には、たくさん宗教の言葉が出てきます。そうした言葉を目にしたとき、その背景の知識があるのとないのとでは、物語の楽しみ方が全然違ってくるのです。
例えば、有名なアニメ『新世紀エヴァンゲリヲン』では、「使徒」「アダム」「イヴ」といったキリスト教の言葉が登場しますよね。そもそも「エヴァンゲリヲン」という語は、「福音」という意味のキリスト教の単語です。
スタジオジブリ作品の『天空の城ラピュタ』では「ラーマヤーナ」「インドラの矢」といった単語が登場します。これはインドのヒンドゥー教の言葉です。
サブカルチャーをより深く楽しむためには、いろいろな知識を持っていたほうが良いに決まっています。とりわけ宗教の知識があるのとないのとでは、作品の理解度もグンと変わってくるのです。
ですから、まずはアニメや小説で知った言葉から、どんどん勉強していけば良いと思うのです。今日は、そんな宗教の勉強に役立つ本を紹介したいと思います。
無宗教でも知っておきたい宗教のことば
今回紹介するのは、こちら朝日新聞出版から発売されている『無宗教でも知っておきたい宗教のことば』という本です。書店に行くとさまざまな宗教の入門書が並んでいますが、まずはこの一冊からで良いでしょう。
若い世代にとっては、宗教の知識はもはや不可欠だ。海外を旅行するときはもちろん、これからは、仕事をするうえで海外とかかわることも増えるだろう。そうした中で相手の宗教と直面することになる。欧米のビジネスパーソンとやりとりをするうえでは、キリスト教的な考え方を知っておくべきである。また、アジアでは、今やイスラム教の世界と出会うことは珍しくなくなった。目の前で礼拝をはじめたら、どうしたらいいのか。断食月には、どう対処したらいいのか。それは切実な問題で、下手に対処すると、軋轢を生むことにもなりかねない。
『無宗教でも知っておきたい宗教のことば』より引用
著者の島田裕巳さんは、東大卒の宗教学者。極端に偏った宗教の見方ではなく、ふかんした立場から、それぞれの宗教を解説しています。
「映画・アニメ・ゲーム・芸術・文学に出てくることば」という章があるので、非常に面白いです。
サクッと読める
この本は、キリスト教やイスラム教の歴史を長い文章で解説するものではありません。見開き2ページを使って、ひとつのキーワードを解説していくという形式になっています。
このため、自分の興味のある分野をつまみ食いすることができるので、気軽に読み始めることができるのが特徴です。
優しい語り口なので、スラスラと読めてしまうのも大きなポイント。まずは、この本で概要をしっかり把握してから専門書を読むのもの良いと思います。
キーワードに関連する写真や表が豊富に使われているので、ビジュアル的に理解することが可能です。関連後もかなりたくさん紹介されているので、脇の知識も増えますよ。
その言葉の英語表記もしっかり載っているので、面白いですよ。辞書的に使うのも便利かもしれませんね。
見開き2ページで、ひとつのキーワードについて解説しているため、とても読み進めやすいのが特徴です。200ページほどのコンパクトな書籍ではありますが、80以上の多数のキーワードを載せています。全6章という章立てです。
常識として知らないとやばいことば
第1章は「常識として知らないとやばいことば」です。以下のキーワードについて解説しています。
- 一神教と多神教
- 旧約聖書と新約聖書
- 天地創造
- アダムとイヴ
- 原罪と贖罪
- イエス・キリスト
- 処女懐胎
- 十戒(モーセの十戒)
- 預言者
- メシア
- 三位一体
- 使徒
- 最後の晩餐
- パウロ
- 愛
- パンと葡萄酒
- 十字架
- アッラーとクルアーン
- 六信五行
- カリフ
- ブッダ(ゴータマ・シッダールタ)
- 如来と菩薩
まず第1章は最低限の教養です。基本中の基本のキーワードからしっかり解説してくれます。
旧約聖書と新約聖書の違い、神が世界を作ったという天地創造のおはなし、最初の人類アダムとイヴなど、基礎的な知識からしっかりと学ぶことができるのです。
キリスト教、イスラム教、東方正教、仏教など、基本的な世界宗教についてまんべんなく押さえてあります。幅広い知識が身につきます。
たとえば「ブッダと如来と菩薩の違い」それぞれ、わかりますか? そういった素朴な疑問も解消できますよ。
世界を知るうえで欠かせないことば
第2章は、より踏み込んだキーワードが登場します。最新のニュースや世界史の教科書でも取り上げられる重要なことばが並んでいますね。
- 原理主義(ファンファメンタリズム)
- WASP(ワスプ)
- シーア派とスンナ派
- ローマ教皇(法王)
- 殉教
- 天使
- 悪魔
- タルムード
- 反ユダヤ主義
- パレスチナ問題
- シオニズム
- ラマダーン(断食)
- ハラールとハラーム
- イスラム金融
- バラモン教とカースト
- アマテラス(天照)
中東のパレスチナ問題、反ユダヤ主義など、知らないとまずいキーワードがめじろおしです。世界情勢を見る上でも重要な言葉ですよね。
「天使」や「悪魔」の解説ではアニメや漫画でおなじみの「大天使ミカエル」とか「大天使ガブリエル」といったことばについて解説がなされています。
使い方を間違えると危険なことば
第3章は、デリケートなキーワードの解説です。
- イスラム原理主義(過激派)
- ジハード
- カルト
- 異端
- 十字軍
- 宗教改革
- 大乗仏教と小乗仏教
- 魔女狩り
使い方を間違えると、あらぬ誤解を生んでしまうことばたち。ここでしっかりとその本来の意味を学んでおきましょう。
魔女狩りの凄惨な歴史について知ると、気軽にこの言葉は使えなくなりますね・・・。
この章のコラムでは、なにかと話題になる「靖国神社問題」についてもわかりやすく解説されています。
日常での意味と少し異なることば
いつも使っているけど、本来の意味はちょっと違う、宗教のことばたち。
- 偶像(アイドル)崇拝
- 洗礼
- 受難
- 因果と縁起
- 業(カルマ)と煩悩
- 極楽浄土と娑婆
- 他力と自力
- 悟りと涅槃
- 禅
- 戒名
- ご利益
- お盆
- 瞑想とヨーガ
- 癒やし(ヒーリング)
- 聖地巡礼
- 聖人
カルマとか、洗礼とか、聖地巡礼とか・・・。よく耳にしますよね。でも実際はどういう意味なのでしょうか。そのルーツを探ります。
映画・アニメ・ゲーム・芸術・文学にでてくることば
この章は特に面白いですよ。作品のモチーフを知ることができます。
- 福音(ユーアンゲリオン)
- エデンの園
- ノアの方舟
- 七つの大罪
- 黙示録(ヨハネの黙示録)
- バベルの塔
- ソドムとゴモラ
- ダビデとゴリアテ
- 西遊記
- ヴィシュヌ神
- シヴァ神
- メメント・モリ
- ツァラトゥストラ
一気に基礎知識を身に着けてしまいましょう。アニメや映画を観るときの理解度がかなり変わってくると思いますよ。
知ってるようでよくわからないことば
第6章は、よくわからないことばの解説です。
- 「ハレルヤ」と「アーメン」
- 『般若心経』
- 阿修羅
- 輪廻転生
- 三途の川
- 曼荼羅
- 密教と顕教
- 檀家
- 諸行無常
- 神仏習合
- 現人神(現御神)
- ニューエイジ
- シャーマン
まとめ
今回は『無宗教でも知っておきたい宗教のことば』という本の紹介でした。
この本は、こんな人におすすめです。
- ざっくりと宗教の基礎知識を学びたい
- アニメや漫画が好き
- 長い文章はあまり読みたくない
- サクサクと読みすすめたい
- 世界史の復習をしたい
- 教養として宗教を知っておきたい
とにかくテンポよく読めるにも関わらず、かなり詳しく、そして網羅的に解説がなされているので、身につく知識の総量はかなりものになるでしょう。
さらに宗教について勉強したい方は、まずはこういった入門書で宗教について幅広く学んで、ピンポイントで興味を持った分野について、さらに詳しい専門書で学んでいくのがおすすめです。
クリスマスもハロウィンもごちゃまぜで楽しんでいるわたしたちですが、その背景には宗教が存在しています。
宗教を知るということは、わたしたち人類の生き方と歴史を知るということです。この本をきっかけに宗教について勉強してみてはいかがでしょう。