大人だって教科書が読みたい【世界史・美術・英語】

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たまに教科書が読みたくなるときがありませんか? 

今、教科書は静かなブーム。というのも、シニア層や社会人が、再学習や趣味のために、学生用の教科書を買い求めるケースが増えているらしいです。

ぼくの場合、国語や世界史、音楽、美術、理科の教科書なんかが好きだったな。写真がたくさん載っていて、楽しかった記憶があります。逆に数学の教科書は大嫌いでした。

新しいインクのにおいが心地よかった。それが教科書。
無理やり読まされるからこそ、印象に残る。それが教科書。
日本中の超一流の先生が執筆しているすごいクオリティの本。それが教科書。
記憶のどこかにひっかかっている物語。それが教科書。

もう一度、教科書を読みたいなあ。あーあ、どこかに教科書を売ってないかなあ…。

「そうだ教科書、買おう」

ということで、新宿駅のすぐ近くにある教科書専門のお店「第一教科書」に行ってみた。

JRのそばで

新宿から徒歩10分。大久保駅からだと徒歩2分。百人町のちょっと奥まった場所を進んでいく。

第一教科書

静かな路地に、煌々と照らし出された大量の教科書が並ぶ建物がある。ここが「東京都第一教科書供給株式会社」である。

第一教科書に並ぶ教科書

決して大きなお店ではないけれど、小学校から高校まであらゆる教科の教科書がぎっしりと取り揃えられている。赤本や参考書といった副教材も置いてあるのが特徴。

もちろん一般人でも、現物をその場で購入することが可能だ。いろいろな会社の教科書を手にとって比較しながら、中身を楽しむことができる。参考書マニアにはたまらない。実に贅沢な場所である。

教科書は基本的に安価なので、どれでも数百円で購入することができる。せっかくなので、いっぱい買おう。教科書って本当に安いからね。

第一教科書に行こう

ここには予備校の先生、塾の講師、家庭教師など、教育関係者や学校関係者が足繁く通うという。

高校の教科書を大量に仕入れていく大学教員もいるらしい。いわゆるリメディアル教育(大学生の基礎知識不足を補うための補修教育)の教材として使われるようだ。

まさにここは教科書の聖地。新宿に行ったときは、ぜひこのお店に足を運んでみてほしい。土曜日は17:00まで開店している。日曜日は閉店しているので気をつけよう。

さあ、教科書を使って教養レベルを強化しよう。教科書で、強化しよう。

大事なことなので2回言いました。

さあ、ここからは教科書の中身を巡る旅の始まりだ。

一番のおすすめは世界史の教科書

山川世界史

一番のおすすめはなんといっても、山川出版の『詳説世界史B』であろう。青いカバーが印象的なこの教科書は、全国の高校生たちに親しまれている大ベストセラー教科書である。文系のみなさんは特にお世話になったのではないだろうか。

詳説世界史B

わたしも例に漏れず文系だったので、この教科書には大変お世話になった。数年毎に改訂されているので、昔使っていたものとは微妙に違っているけれど、非常に懐かしい。

無機質で質実剛健たる格調高い文体。たまに入っているちいさな挿絵。もはやある種の様式美である。これぞ山川世界史が山川世界史たるゆえんである。

この教科書の記述・流れを確実に把握すれば、東京大学の難解な入試問題にも対応できるらしい。すごい対応力である。

世界史ブームに乗っかって

この教科書は、過不足のない歴史の記述がウリで、単純に読み物としても面白い。

概観やまとめといったコーナーが充実しており、大局的な視点で歴史をながめることができるのもポイント。

世界各国の歴史、過去の勢力図、宗教史、などを頭に入れておけば、毎日のニュースの理解も進む。と、ニュース解説でおなじみの池上さんも言っていたような気がする。

最近では、世界史もまたブームだと聞く。歴史上の英雄や偉人を召喚して戦わせる、某Fateというゲームの影響もあり、若い世代を中心に、メソポタミアやエジプトといった古代史、騎士物語や英国史といったエピソードが注目を浴びているようだ。

世界史の知識は、そのようなサブカルチャーを楽しむ際にも大いに役立つと思う。社会人の再学習にもピッタリの一冊ではなかろうか。

さらに詳しく学びたい人はこちら

山川世界史の教科書をさらに詳しくしたのがこちらの『詳説世界史研究』である。こちらは教科書ではなく教員向けの副読本といったような立ち位置だが、一般書籍なので、誰でも購入が可能。教科書の完全上位互換なので、世界史が大好きな人は手元に置いておいても損はない。大学受験レベルを凌駕したボリュームになっている。

音楽の教科書

音楽の教科書

音楽の教科書も眺めているだけで面白い。

当時はよくわからなかった合唱曲やクラシック音楽も、今はなんとなく愛おしい。長い時間が経っても、バッハやヴィヴァルディはずっと教科書に載っているのだ。

民謡

音楽の教科書には、日本の民謡の分布が載っている。これが面白い。

静岡のちゃっきり節、秋田の秋田おばこ、山形の花笠音頭、岩手の南部牛追唄、兵庫のデカンショ節など、勉強になる。

美術の教科書

美術の教科書

こちらは高校の美術の教科書だ。美術の教科書も内容が充実していてかなり面白い。

数ページに渡って美術史が綺麗にまとまっている。

詳細でわかりやすい解説が付いていて、しかも全面フルカラーである。これは非常にお得だし、勉強になる。

ロマン主義、印象派、ルネサンス、シュルレアリスム、象徴主義、ジャポニスム、いろんな言葉が飛び交う。美術の教科書を読んでおけば、ルノワールとクールベの違いくらいは説明できるようになる。

これで美術館デートのときも安心だ。

風景画

英語の教科書

ジェーン・グドール博士

こちらは高校英語の教科書『CROWN』。
チンパンジー研究者のジェーン・グドール博士など、世界中のバラエティに富んだエピソードが特徴である。

エレンベーカー先生

こちらは中学英語の決定版『NEW HORIZON』である。新しい地平を切り開く英語の教科書の金字塔だ。

エレン=ベーカー先生というキャラクターが人気で、一時期ネット上を騒がせた。

昔は読解に苦労していた英語の教科書であるが、大人になった今、読み返してみると意外と苦にならない。わたしも成長したのだろうか。

ちなみにエレン=ベーカー先生は、教科書に登場するオリジナルキャラクターとしては異例の扱いを受けており、グッズ化がなされている。カレンダーが大量に発売されているので、ファンは要チェックであろう。

なぜかLINEスタンプも発売されている。

数学の教科書

二次不等式

2次不等式の解。そういうのもあったね。

数学の教科書
グワアアアアアアアアアアアアアア。ナンダコレハ。

高校数学では、データの解析などが必修になっているようだ。きっと日本の将来は明るいよ。データサイエンス立国もそう遠くはないだろう。

正直、数学に良い思い出がないので、あまりコメントはない。

教科書は面白い

作家の川上未映子は、教科書についてこう語っている。

4月になると配られる教科書を学校が始まる前に何回も繰り返して読むということが数年続き、そのうち図書室や図書館に通うようにもなるのですが、まだ始まってもいない1年間の国語の授業がまるで「おさらい」のような、そんな子どもの頃だったのを覚えています。

ほとんどの場合、学生時代を終えて大人になってしまえば、限られた時間を読書にあてようとすれば自分の好みや必要性にあった本を読むことになるものだし、それは逆から言えば、自分の読みたくないものや自分の予想の外にあるものは読まないですんでしまえるということで、子どもの頃の教科書にあったような―おもしろかったかそうでなかったかはさておき―さまざまな種類の、好きだなと思えるものやそうでないものに、いやでも出会って読んでしまうという経験をすることじたいが難しくなります。書店に行っても手に取るのはいわゆる自己啓発本や実用書、それが悪いことじゃまったくないけれど現世利益的というか「役に立つもの」、表紙を見るだけで「何に効くのか」がすぐに分かってしまう本ばかりになってしまうなかで、幼少の教科書をなめるように読むというあの読書体験は、振り返ってみれば本質的に贅沢なものだったのかもしれないな、と思います。
(中略)
そしてそんなふうにして出会った本や物語の中でも「おもしろくなかった」「まるで印象に残らなかった」「まちがいなく、つまらなかった」というようなことがあったとしても、そういう本や体験こそが後々の人生においてどのような効力を発揮することになるのか、どんな影響を受けているのかはわからないわけです。何がどこでどんな具合でいったい何に、効くのか。あるいは、効かないのか。それはある子供がどんなふうに育つのかはわからない、どんな意図も準備も役に立たない結果も、またその逆もあるように、わたしたちの肝心な部分はそんな一回性に、ゆだねられています。

『ぐうぜん、うたがう、読書のススメ』より引用

幼少の頃に読んだ教科書が、実は今の自分に大きな影響を与えているのかもしれない。遠い記憶のなか、原風景の一角を占める教科書という存在。

勉強のために買うも良し、昔を懐かしむために買うも良し、自分のルーツを探るために買うよも良し、教科書は面白い。

大人だって教科書が読みたいときがある。